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コラム「坤輿万国全図」カーボンニュートラル

2021.9.30

2021年9月号 カーボンニュートラル

2017年10月、山東省青島から乳山に向かう高速道路のサービスエリアで電気自動車の充電施設を見た。充電中の車は見かけなかったが、電源はONであり使える状態であった。この頃中国ではガソリン車のナンバープレート取得は困難であり、電気自動車(EV)の普及政策がすすめられていた。ただしこの政策は大気汚染緩和のためであった。図1を見ていただきたい。中国の電源別受発電電力量のうち石炭は現状で約6割を占めている。EVの普及が直ちにカーボンニュートラルに貢献するわけではなかった。

写真1 山東省の高速道路サービスエリアのEV充電ステーション(2017年)

しかしながら中国の再生可能エネルギーによる発電量の増加は著しい。風力と太陽光による発電量は2015年から2020年にかけて三倍に増加している(図2)。水力を含めた再生可能エネルギーでの発電量は、すでに日本の発受電電力量の二倍近い(図1)。カーボンニュートラル実現の取り組みの中で、発電エネルギーは石炭から再生可能エネルギーへシフトし、交通、建築、工業を電化に向かわせ省エネと高効率が求められると言われている。

図1 電源別受発電電力量の比較(2019年) (電気事業連合会、NEDO、JICAのインターネット情報より整理)

図2 中国の再生可能エネルギーによる発電量の推移

図3 生態環境部から発表されたカーボンニュートラル関連の制度数(筆者調べ)

2020年9月、中国は国連総会で2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量をピークアウトさせ、60年までに排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す表明がなされた。図3に、カーボンニュートラルに関する制度の公表数を示した。2020年11月以降、公表された制度の数は増えていることが判る。2020年以降に生態環境部から発表された主な制度を表1に示す。「気候変動と生態学的環境保護に関連する作業の調整と強化に関する指導意見」で今後の政策の方向を示している他は、温室効果ガス排出権取引に関する制度である。

「気候変動と生態学的環境保護に関連する作業の調整と強化に関する指導意見」のうち、産業界に関わる主な内容を以下に示す。汚染物質と温室効果ガス排出削減が関連づけられ、温室効果ガス排出に関する情報は排汚許可証(汚染許可管理情報プラットフォーム)にも載せられるようである。企業は自社の温室効果ガス排出量を理解し削減策を持つべきであると思う。

弊社の主な環境対策装置であるECOクリーン(水処理)及びFP法(排気VOC処理・触媒燃焼又は液化回収)は電気駆動の装置であり、従来装置に比べてエネルギー使用量は格段に少ない。設計にあたっては工場環境対策での二酸化炭素排出量の試算も提供できる。

 

  • 鉄鋼、建材、非鉄金属、化学薬品、石油化学、電力、石炭、運輸、建設、その他主要産業に対して、二酸化炭素排出量ピークオフの目標を提示し、行動計画を策定
  • 炭素排出権取引市場システムの確立、電力業界から開始して市場範囲を拡大、温室効果ガス削減のための市場メカニズムを活用
  • 法律及び規則の策定と改定、気候変動に関する法律の推進の加速、炭素取引権管理規則の公布と実施
  • 炭素排出削減評価と性能評価基準、低炭素評価基準、排出会計報告と検証等の管理技術仕様を構築
  • グリーンファイナンス政策の促進、炭素排出権取引市場における主要排出単位のデータの提出、法令に基づく企業環境情報の開示
  • 汚染削減と炭素削減の相乗効果の実現を促進、エネルギー消費量と排出量の多いプロジェクトを厳格に管理
  • 環境統計に温室効果ガス排出量を追加、オゾン層破壊物質とフッ素含有ガスの生産、使用、輸出入に関する統計調査を強化、プロジェクトの炭素排出量積算および検証システムを改善
  • 環境影響評価に気候変動の影響を含めることを促進、汚染許可管理情報プラットフォームの改善(汚染物質と温室効果ガスの統合収集)
  • 温室効果ガス(メタン、HFC、六フッ化硫黄、パーフルオロカーボンなどの非二酸化炭素温室効果ガス排出量を含む)のモニタリング強化
  • 炭素排出権取引市場における主要な排出単位の監督と管理を強化、温室効果ガス排出に関する情報を開示するよう企業に奨励
  • 都市と地域を選択して大気環境基準と炭素排出量のピークを達成するためのパイロットデモンストレーションを実行
  • 主要な低炭素技術カタログの発行、二酸化炭素の回収、利用、貯蔵の実証プロジェクトの建設を推進、温室効果ガスと汚染物質の協調的削減に関連する技術の開発、実証、促進を奨励

 

次号では企業の温室効果ガス排出量報告書の検証に関するガイドライン(試行)について理解を深めたい。

表1 2020年以降 生態環境部から発表された主な制度

公表時期 制度の名称 日本語/中国語 主な内容
2020年12月 炭素排出権取引管理弁法(試行)

碳排放权交易管理办法(试行)

温室効果ガス排出権取引及び関連活動に適用される制度(試行)、炭素排出枠の配分・償却、排出権の登記・取引・決済、温室効果ガス排出報告・審査等の活動、及びこれらの活動の管理監督を含む内容。
2021年1月 気候変動と生態学的環境保護に関連する作業の調整と強化に関する指導意見

关于统筹和加强应对气候变化与生态环境保护相关工作的指导意见

カーボンニュートラルを実行するための、思想や基本原則、戦略的計画、政策や規制、制度の統合、イノベーションの強化、国際協力など、今後の政策方針を示す
2021年3月 企業の温室効果ガス排出量報告書の検証に関するガイドライン(試行)

企业温室气体排放报告核查指南(试行)

主要排出企業の温室効果ガス検証の原則と根拠、検証手順と要点、検証とレビュー及び情報開示について解説
2021年3月 炭素排出権取引管理に関する暫定規則(草案改訂草案)

碳排放权交易管理暂行条例(草案修改稿)

国内の炭素排出権取引および関連活動の監督と管理に適用される規則
2021年5月 炭素排出権登記管理規則(試行)

碳排放权登记管理规则(试行)

炭素排出権の保有、変更、清算、取消登録、および関連事業の監督と管理に関する規則
2021年5月 炭素排出権取引管理規則(試行)

碳排放权交易管理规则(试行)

炭素排出権取引および関連するサービス事業の監督および管理に関する規則
2021年5月 炭素排出権決済管理規則(試行)

碳排放权结算管理规则(试行)

炭素排出権取引の決済監督と管理に適用される規則

 

カーボンニュートラルとの関連はないが、南京の鶏鳴寺(中国語発音ジーミンスー、地元ではハト寺とも呼んでいた)を紹介したい。紹介優先度の高いスポットである。

写真2 左:7層の薬師仏塔が見えているのが“ 鶏鳴寺 ”。その先は南京市中心部。鶏鳴寺は西暦300年頃の創建といわれる古寺である(造りはコンクリート)。中:正面が薬師仏塔、香炉や燭台があり祈りの場所でもある。線香の煙が立ち込めている。右:各所に土産店がある。

写真3 高台の頂部には精進料理のレストランや中国茶カフェもある。中国茶はお湯を何杯も継ぎ足して味わうことができる。筆者は文書創作時によくこのカフェを利用した。長い時間、集中できる環境である。外を眺めると、南京の城壁や玄武湖が見える。写真を撮影したのは2014年。この年の夏、青年オリンピックが南京で開催されていた。

写真4 祈り方は、太めの3本の線香(拝観の際にいただける)を持ち東西南北四方に向けて礼をして、祈願する。病気平癒、商売繁盛、厄年など参拝の目的は日本の神社に近い。大切な祈りの際には蝋燭を買い求め、札に祈祷内容を書いて祈る。