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コラム「坤輿万国全図」カーボンニュートラル2

2021.10.31

2021年10月号 カーボンニュートラル2

(中国)企業の温室効果ガス排出量報告書の検証に関するガイドライン(試行)※1

※1:企业温室气体排放报告核查指南(试行)、(中国)生態環境部弁公庁、2021年3月26日

カーボンニュートラルに関する文書である「企業の温室効果ガス排出量報告書の検証に関するガイドライン(試行)」について理解を深めたい。同ガイドラインは2021年3月、生態環境部弁公庁から通知されている。

本ガイドラインでは、政府が行う重点排出単位(企業など)の温室効果ガス排出報告書の検証の原則と根拠、検証手順と要点、検証内容とレビューおよび情報開示について規定している。さらに、これ以外の企業などに対しても温室効果ガス排出報告書の検証などで本ガイドラインを参考にできると示されている。重点排出単位とは温室効果ガス年間排出量が二酸化炭素換算で26,000トン以上に達する企業またはその他の経済組織のようである。

私は2000年頃、当時所属していた会社や事業部のISO9001やISO14001の構築と認証取得の仕事も行なっていた。本ガイドラインに示されている検証の手順はISOの外部監査の手順に近いようであるが、以下示した内容はISOの外部監査とは異なる手順である。ISO14001審査員補の講習も受けていた私にとっては監査という言葉を使いたくなるが、本文では原文(核查)の直訳である「検証」のままで説明を続ける。

  • 検証チームは政府が組織する。
  • 検証計画や検証結果は検証チームから政府に報告される。
  • 被検証単位に対して検証結果は政府から伝えられる。
  • 検証結果は外部に公表される。

検証で準拠する基準は、以下のとおりとされている。この中で、「温室効果ガス排出の算定方法と報告ガイドライン」についてはこれから理解したいと思っている。

  • 炭素排出権取引の管理のための措置(試行)(碳排放权交易管理办法(试行))
  • 生態環境部が発行した作業通知(生态环境部发布的工作通知)
  • 生態環境部によって策定された温室効果ガス排出の算定方法と報告ガイドライン(生态环境部制定的温室气体排放核算方法与报告指南)
  • 関連する規格と技術仕様(相关标准和技术规范)

検証の手順や要点は以下の通りである。

  • 検証準備

省級生態環境主管部門が、検証タスク、スケジュール、リソースを検討。検証作業は外部の「技術サービス機関」に委託されるようであり、検証の公平公正を確保するために「技術サービス機関」に対する禁止事項を示している。

  • 検証技術ワーキングチームの組織

省級生態環境主管部門が「検証技術ワーキングチーム」を組織する。

  • 文書審査

「検証技術ワーキングチーム」は、温室効果ガス排出量報告書などの文書・記録のレビューを行い、現地検証の要点や要員・スケジュールなどを「現地検証リスト」に記入して、省級生態環境主管部門に提出する。

  • 現地検証チームの組織

省級生態環境主管部門が「現地検証チーム」を組織する。

  • 現地検証の実施

「現地検証チーム」は「現地検証リスト」に従って、関連するエビデンスと補足資料を収集する。

「現地検証チーム」は、現地検証作業を終えた後、完成した「現地検証リスト」を「検証技術ワーキングチーム」に提出する。

「検証技術ワーキングチーム」は、「現地検証リスト」の内容の確認を行い、「不適合リスト」を作成して被検証単位へ是正措置を要求する。

重点排出単位は「不適合リスト」を受け取ってから5営業日以内に、「不適合リスト」の“是正措置と関連する証拠”列に記入し、「検証技術ワーキングチーム」に提出する。

  • 検証結論の作成

「検証技術ワーキングチーム」は、「検証結論」を作成し、省級生態環境主管部門に提出する。

  • 検証結論の通知

省級生態環境主管部門は、検証の結論を重点排出単位(被検証単位)に通知する。

  • 検証記録の保存

省級生態環境主管部門は、検証のためにすべての書面(電子を含む)文書を保管する。

  • 再検証

重点排出単位は、検証結果に同意しない場合、検証の結論が通知された日から7営業日以内に省級生態環境主管部門に対して再検証を申請することができる。

  • 情報公開

検証作業が完了した後、省級生態環境主管部門は、すべての重点排出単位の「検証結論」を公式ウェブサイトで公開し、生態環境部に報告する。

次号では、生態環境部によって策定された「温室効果ガス排出の算定方法と報告ガイドライン」について理解を深めたい。


今回は南京市にある朝天宮(ちょうてんきゅう)を紹介する。

朝天宮は、現在では南京市博物館として使用されている歴史的建造物である。明代初期の朝天宮は道教の寺院であり国家の道教管理機関が置かれた場所と示されている。歴史はさらに古く、春秋時代(紀元前771年〜紀元前5世紀)に呉(紀元前585年頃〜紀元前473年)の王夫差(ふさ。? 〜 紀元前473年)により治城が築城される。三国時代(184年〜220年)には呉(ご、222年 〜 280年)の銅鉄器の製造拠点になったとされている。

写真1左:朝天宮の案内図。中:入口である櫺星門(れいせいもん)。右:二の門である大成門。奥に展示館である大成殿が見えている。撮影した日時は2014年12月7日、日本時間18時頃。未だ陽が落ちていなかった。

写真2左:展示館の一つである大成殿。中:大成殿右側に亀を台座とした明代と言われる石碑がある。1000文字の碑文が記されていて朝天宮の沿革が示されているとの説明文があるが、表を見ても裏を見ても碑文は見つからなかった。右:大成殿内部に展示されていた絵。タイトルに「開宗明義章」と書かれた絵画。宋代の絵であろうか。

写真3左:大成殿内部は非常に暗い。展示されている衣装は先程の絵画の女性たちの衣装であろうか? 中:ストロボ(表示はなかったが、多くの博物館と同様にここもストロボは禁止のようであった)で撮影をすると模様が浮き出ていた。右:どちらが良いであろうか、ストロボ無しの原色の方が、衣装は羽衣に見える。

写真4 左:展示物の中に日本と中国の交流の記録が示されていた。驚いたことに、西暦420年頃、宋代には既に日本人が南京に来ていた。当時の旅は危険と隣り合わせの移動であったろうが、真新しいものを見る好奇心、地元の酒や食事の味わいかた、初めての人に会話を求める想いは、おおよそ1600年前の人々も現代の私たちと同じ想いであったろう。

せっかくなので、写真の中の交流記録のうち、インターネット情報で確認できた交流の歴史を以下にまとめてみた。なお、この宋(420年〜479年)は南北朝時代の南朝の国であり、首都は南京(当時の地名は建康)であった。

  • 永初2年(421年):宋に朝献し、武帝から除授の詔をうける。おそらく「安東将軍倭国王」(「宋書」夷蛮伝)
  • 元嘉2年(425年):司馬の曹達を遣わし、宋の文帝に貢物を献ずる。(「宋書」夷蛮伝)
  • 元嘉7年(430年):宋に使いを遣わし、貢物を献ずる。(「宋書」文帝紀)
  • 元嘉15年(438年):宋文帝、珍を「安東将軍倭国王」とする。(「宋書」文帝紀)
  • 大明4年(460年):孝武帝へ遣使して貢物を献ずる。
  • 大明6年(462年):宋・孝武帝、済の世子の興を「安東将軍倭国王」とする。(「宋書」孝武帝紀、倭国伝)
  • 昇明1年(477年):遣使して貢物を献ずる。(「宋書」順帝紀)
  • 昇明2年(478年):順帝、武を「使持節都督倭・新羅・任那・加羅・秦韓・慕韓六国諸軍事安東大将軍倭王」とする。(「宋書」順帝紀)