当社は、発明考案「ウォータージェット工法の濁水再生装置」において、日本発明振興協会および日刊工業新聞社共催の第51回(令和7年度)「発明大賞」にて「発明功労賞」を受賞しました。表彰式は2026年3月13日に開催予定です。
本技術は、ウォータージェット(WJ)施工で発生する濁水を現場で再生し、施工水として再利用できる装置であり、水資源の循環利用と施工現場の省力化、環境負荷低減を同時に実現する点が評価されました。
△ WJ濁水再生装置
WJ工法の拡大と現場が抱える水利用の課題
WJ工法は、橋梁やトンネルなどのインフラ補修工事において、コンクリート表面の除去や洗浄を行う技術として広く利用されています。近年は老朽化インフラの更新需要の高まりを背景に、施工機会は増加傾向にあります。
一方で、WJ工法では施工に大量の水を必要とします。現場では給水車に使用水を積んで運搬する作業とバキューム車による廃水回収作業が日常的に行われております。給廃水作業の負担、さらには運搬車両の稼働によるCO₂排出などが課題となっていました。
さらに、超高圧WJ装置はポンプ保護の観点から使用水には水道水レベルの水質が求められるため、現場で発生する濁水をそのまま再利用することは難しく、これまで効率的な循環利用は困難とされてきました。
現場で濁水を再生し、施工水として循環利用
こうした課題に対し、当社は現場で濁水を再生し、施工水として再利用できる濁水再生技術を開発しました。
本装置は、WJ施工で発生する高濁度・高アルカリ濁水を処理し、水質を最適化することで、再びWJ装置へ供給可能な水質レベルまで再生するものです。これにより、水道水の使用量・廃水量を大幅に削減し、また給水車や廃水運搬の負担軽減、CO₂排出削減にも貢献します。
2018年から研究開発、第一カッター興業株式会社と共同開発
本技術の研究開発は2018年に開始しました。
その後、2022年からはWJ施工大手である第一カッター興業株式会社と共同開発を進め、実際の施工現場で発生する濁水を用いた検証を重ねてきました。
現地実証においては、再生水を用いたWJ施工でもポンプ摩耗などの問題が発生しないことが確認されており、施工現場での実用化が進められています。
処理フロー
本システムは、①沈降工程、②CO₂添加による処理水最適化工程、③ろ過工程の3段階で構成されています。
まず①沈降工程では、施工で発生した高アルカリ濁水から粗大粒子を沈降分離します。上澄み水のみを後段処理へ送ります。
次に②CO₂添加による処理水最適化工程では、反応タンクにCO₂ガスを添加します。イオン状態のカルシウム(Ca²⁺)を炭酸カルシウム(CaCO₃)として析出させるためです。添加量は電気伝導率およびpHを指標として制御し、過剰中和を防ぎながら最適条件を維持します。
最後に③ろ過工程では、析出した炭酸カルシウムなどの懸濁物質を当社膜ろ過装置「ECOクリーン」で回収します。処理水は水道水質レベルまで清澄化されます。ECOクリーンは独自開発のプリーツフィルター技術をもとに、ろ過精度0.15μm×99.95%を実現しており、WJ施工に必要な高品質な供給水を安定的に確保します
△ WJ濁水再生処理フロー
装置の特長
1. 高い処理能力: 1時間で4トンの水をろ過できます。
2. 完全オートメーション: ボタン一つで全自動制御が可能です。
3. 高精度ろ過: 0.15μmの精度で水をろ過し、再利用可能な水質にします。
4. 中和機能: 炭酸ガスを使って廃水を中和し、環境に優しい処理を行います。
5. コンパクト設計: すべての装置が4トントラックに収まります。
評価項目は「新規性」、「優秀性」、「実用性」の3点
①新規性
現場でpH10〜12、濁度約5,000mg/Lの高濁水をそのまま処理し再利用する仕組みを確立。CO₂の溶解反応による中和と炭酸カルシウムの析出、さらに精密濾過を組み合わせることで、省力化と環境負荷低減を同時に実現しています。
②優秀性
給水車やバキューム車の台数・運搬費・人件費を大幅に削減します。現場でのオンサイト再生により工事の中断が減少し、生産性の向上に貢献しています。また、CO₂の固定化によって環境負荷のさらなる低減を図り、水質も安定的に管理されています。
③実用性
現場の試験施工で水質が基準を満たし、ポンプの摩耗異常も確認されなかったため、既存施工現場に直ちに応用できます。 インフラ保守市場における水関連費用の削減に寄与し、持続可能で脱炭素社会の実現にも大きく貢献する技術となっています。将来的な環境規制の強化にも柔軟に対応可能です。
今後の展開
本装置は従来の濁水設備に比べて大幅なコスト削減効果が期待されており、その実証のためにWJ削孔研究会と連携し、全国の橋梁や施工現場でのデータ収集を進めてまいります。今後も業界初の実用化に向けて改良を重ね、より効率的で環境に配慮した濁水再生装置の開発を推進してまいります。
