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創業者の西村章が旭日双光章を受章

2025.4.30

お知らせ

このたび、創業者の西村章が令和7年春の叙勲において、旭日双光章を受章いたしましたのでご報告申し上げます。

西村は創業者として、これまで長きにわたり「最適環境の創造」を追求してまいりました。
トンネル工事用集塵機をはじめとする環境装置における技術振興への功労が認められ、今回の受章に至りました。

西村は受章に際し、次のように述べています。

このたびの叙勲の栄に浴し、身に余る光栄に存じます。今回の受賞は、ひとえにステークホルダー各位のご支援の賜物と厚く御礼申し上げます。

「フィルターイノベーションで環境課題を解決する」研究開発、知財活動やものづくりを、社員とともに推進してきたことをご評価いただいたものと承知しております。

大気・水・土壌など地球環境をきれいにする社会課題は待ったなしです。

これからもより良い環境を作る装置開発で社会貢献に邁進してまいります。

伝達式の様子

5月28日「令和7年春の勲章・褒章伝達式」および皇居における「天皇陛下拝謁」が執り行われ、受章者である西村章が出席いたしました。

令和7年春の勲章・褒章伝達式

西村章 功績の概要

今回の受章に至るまでの取り組みや貢献内容についてご紹介いたします。

西村章は、昭和52年5月に流機エンジニアリングを設立。平成2年10月から令和5年9月まで代表取締役を務め、業界初の技術・製品開発により、大型集塵機関連の特許取得、フィルター技術を起点とした製品で市場開拓を行うなど、同社の競争力向上・事業規模拡大に貢献いたしました。

1. 時代背景と起業

当時勤務していた会社の土木事業撤退を受け、作業員の環境保全と機械の設置・施工・アフターサービスまでを一元化したサービスを提供する必要があるとの思いから、昭和52年5月、元同僚と流機エンジニアリングを起業。

・昭和51年~

新工法(NATM)の導入により、大断面トンネルの急速な施工が可能となった一方で、粉じんや有害ガスの大量発生によって、作業者の「トンネルじん肺」が深刻な社会問題となっていた。
掘削作業の最前線では多くの作業者がばく露。年間1,300人を超える作業者がじん肺と診断されるなど、労働環境の改善が喫緊の課題とされていた。
 

・昭和52年5月

株式会社流機エンジニアリング設立
 

・昭和54年

労働省が定める「粉じん障害防止規則」が改定され、事業者は粉じん発生源を特定し対策を講じることが義務化されたが、設置スペースが限定される現場(トンネルを掘り進める工程を妨げないように、機器・設備の設置空間が限定される状況下)において、当時の機器・設備では、発生した粉じんを十分に捕集し排出することができていなかった。

これらの課題を解決するため、西村は大型集塵機の開発・改良と現場での実証を重ね、高い性能と品質の優れた製品の生産の成功。トンネル工事の効率性と安全性の向上を実現した。
 

・令和4年

作業従事者のじん肺有所見者は5人に大幅に減少し、社会課題解決の一助となった。
 

2. トンネル工事用大型集塵機の開発

トンネル工事の現場では、機器・設備を設置するスペースの制約がある中、高い清浄・集塵能力とメンテナンス負荷の軽減等、様々な機能が求められる。
これらの課題を解決するため、西村は10年もの歳月をかけて研究・改良を重ね、性能を飛躍的に向上させた。

トンネル工事用集塵機

大風量処理・コンパト化

(1) 効果的な表面ろ過の追求

フィルタ表面にプレコーティング加工し、粉じんを払い落としやすくする技術を開発。素材選定や分布・量の調整、ろ布との相性等、最適な条件となる技術を確立した。
⇒ 高清浄度:処理風量の確保と目詰まり防止の両立を実現

大風量処理・コンパト化

(2) 大風量処理・コンパト化 <フィルターメーカーとの共同開発>

より多くの粉じんを捕集するには、単純に吸引力を強力にすれば良いのではない。フィルタが目開きすることによって粉じんを吸い込んでしまうため、適度の吸引力で粉じんの捕集効率を上げる必要がある。
フィルターをプリーツ状にすることで表面積を大きくする一方、集塵機自体はコンパクト化を実現。
⇒ コンパクト化:ろ布面積 約20倍 / 装置寸法他社の1/5
トラックへの搭載と坑内移動が可能に

メンテナンスフリーの実現

(3) メンテナンスフリーの実現

衝撃波を使って粉じんを払い落す機能とフィルタの自動再生機能を開発した。
① 電磁弁からフィルタ内部に向かって強力な圧縮エアをパルス波として放出
② プリーツフィルタ本体の上部から下部に衝撃波が伝搬
③ フィルタの外側に付着した粉じんが剥離
④ 払い落とされた粉じんが蓄積
⇒ 長寿命:フィルタ寿命1か月→4~6年工事期間中のフィルタ交換不要 / 空気中粉じん濃度 1mg/㎥→0.1mg/㎥
(大気と同レベル)

3. 換気技術の進化

平成元年からトンネル(ずい道)じん肺訴訟が相次いだことを受け、労働省(現 厚生労働省)の取り組みに協力。
建設業労働災害防止協会「じん肺防止対策に関する調査研究会」(H10年~H12年)、「ずい道工事における換気技術委員会」(H12年~H14年)の委員として「粉じん対策ガイドライン」「ずい道等建設工事換気技術指針」の改定において、最新の換気技術を紹介、同技術の普及を促進した。

<吸引ダクトシステムの開発・吸引捕集方式の確立>

従来の集塵機は、トンネル断面に対して処理能力不足。粉じんを発生源に近いところで処理することが効果的であるが、スペースの制約や爆風・衝撃による破損リスクが高いため、切羽付近への設置は困難であった。
平成14年、西村は吸引口をリモコンで伸縮させる「吸引ダクトシステム」を開発。

吸引ダクトシステム

国内:令和2年、厚生労働省「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」目標管理レベルの実現可能な工法として推奨。国内ではトップシェア。

海外:国際トンネル協会の推奨例として海外市場でも高く評価。アイルランド、韓国、シンガポール、台湾、中国、香港で採用。自社売上高の海外比率 約10%。

⇒トンネル工事の効率性と安全性の向上を実現。日本で確立した新たな技術を世界にも提供。

4. 新たなビジネスモデルの構築

従来、トンネル工事用に用いられる集塵機は、メーカーから購入したレンタル会社レンタル会社が工事請負事業者に貸し出し、現場で運用しているが、現場に応じた換気設計等の調整が必要なことから、十分な対応ができず、せっかくの機能も活かしきれていない状況にあった。

<メーカーレンタル方式の確立>(平成7年~)

① メーカーレンタル 業界初
 機器はすべて自社で保有・メンテナンスしており、顧客は必要なときに必要なだけ利用できるレンタルサービスとして提供。常に最適な状態で提供することで、安心と柔軟性を両立。
② ワンストップサービス 業界唯一
 換気設計・設備設計から、現場でのメンテナンスやトラブル対応に至るまで、顧客の状況や課題に応じた一貫したサービスを提供。技術面だけでなく、運用上のサポート体制も整備。

⇒集塵ソリューション売上高: H7年度 5億円 → R5年度 26億円
 総合サービスが多くの顧客から支持され、2020年版グローバルニッチトップ企業100選(令和2年)

5. 技術開発功績等

(1) 技術開発功績

社長任後に申請した集塵機等に関する特許及び実用新案は52件。
・トンネル工事用集塵技術:33
・焼却炉解体工事用・中間貯蔵施設用集塵技術:5
・水ろ過技術:14

(2) 業績推移

・社長就任時(H3.9):売上高7.5億円 / 営業利益0.1億円
・会長就任時(H26.9):売上高31億円 / 営業利益3.4億円
・取締役退任時(R5.9):売上高53.4億円 / 営業利益7.2億円

⇒技術開発を確実な製品開発に繋げ、同社を大きく発展させた

5. 事業領域の拡大(フィルタ技術の領域拡大)

トンネル工事用集塵機のフィルタ再生技術とコンパクトでありながら大風量を可能とした技術を他分野に応用し、市場開拓を進めた。

(1) テフロンメンブレン加工による高い濾過技術の実現(平成18年)

人体に深刻な影響を与える物質の除去には、高精度なフィルタが必要であるが、ランニングコストが大きな負担となっていた。
西村は、テフロンメンブレンにラミネート加工する技術を開発。高性能・低コストのフィルタを実現し、有害物質の除去にも効果を発揮し、土壌汚染や焼却炉解体、原子力施設など幅広い分野で活用されている。

(2)  「FP法(フィルター・パウダー法)」の開発(平成21年)

テフロンメンブレン加工したフィルタに機能性パウダーを添着し、有害物質を吸着除去する技術を開発。環境対策集塵装置としてすぐに実用化した。従来、ガス状の有害物質や臭気の除去に使用されるペレット状の活性炭に比べ16倍の効果を発揮。焼却炉解体工事、中間貯蔵施設向け集塵機 国内トップシェア

(3) 福島第一原子力発電所に関連した処理技術の活用

① 汚染土壌貯蔵
除染作業で発生する土壌等の中間貯蔵施設で本技術が採用。作業環境・外部飛散防止の安全性が高まった。豊洲市場の土壌改良工事採用。令和4年10月、「東京都功労者技術振興功労」受賞
② 濁水排水処理
放射性物質を含む汚染水を浄化し、除染洗浄水として再利用できるフィルタ式水処理装置を開発。
その後7年にわたる実験研究を経て、水処理の領域でも目詰まり対策や装置の全自動化を実現、フィルタ面積の大容量化とコンパクト化、長寿命化を大幅に向上させた。令和3年3月、日本発明振興協会「発明大賞 本賞」受賞。水ソリューションという新たなビジネスを展開

(4) 「LFP法(リキッド・フィルター・パウダー法)」の開発(令和4年)

FP法を応用し、活性炭パウダーをフィルタに積層させ水中に溶け込んだPFASを高精度で吸着除去する技術を開発。4種類のPFASを含む模擬水を98.8から99.7%の精度で浄化に成功。
令和5年4月、宜野湾市でPFAS除去装置として採用(国内初)
令和5年度 環境省「土壌汚染調査対策技術検討調査」実証研究採用