流機エンジニアリングは、2025年5月28日〜30日に開催された「2025NEW環境展」に出展しました。
本ページでは、会期中に実施したセミナー「PFAS排水処理の技術選定と導入手順ー見逃せない!2026年からの規制に備えるステップ・アプローチ」の内容を、アーカイブとして公開しています。PFASを取り巻く国内外の規制動向をはじめ、最新の除去技術、導入事例、実務における検討ポイントまでを網羅的にご紹介しています。
ぜひみなさまの取り組みにお役立てください。
1.PFASとは/ライフサイクルと地球循環


PFASは炭素とフッ素の結合を持つ化合物で、泡消火剤や衣類、調理器具などに幅広く使われてきました。
しかし分解されにくく、環境中に長く残るため「永遠の化学物質」と呼ばれます。近年、健康への影響が明らかになり、各国で規制が進んでいます。
PFAS対策はライフサイクル全体の把握が重要です。どこで使われ、誰が対策するべきかを考える必要があります。PFOS等はすでに規制されているものの、PFAS全体では依然として製造・使用が続いており、排出も進行中。大気への規制も視野に入れる必要があります。
2.各国の規制・飲料水の基準/なぜ今、PFAS対策が経営課題なのか


このスライドでは、日本・EU・アメリカにおけるPFASの飲料水基準と規制状況を比較しています。
・日本はPFOAとPFOSの合計で50ng/Lが目安。
・EUでは20種のPFASに対し、合計100ng/L(さらに総PFASで500ng/L)など、広い範囲をカバー。
・アメリカは個別物質ごとに厳しい基準(4〜10ng/L)を設定。
各国とも、対象物質や規制の厳しさに違いがありますが、共通してPFASの規制強化が進んでいます。
海外との取引では、PFASを含む原材料や製品の輸出入も制限対象となります。国内でも、追加7種の規制を見越した対策が必要になるでしょう。
3.現状の課題と影響/健康被害・訴訟リスク


PFASは、特定地域の問題ではありません。全国各地で検出が報告されています。生活インフラや産業活動と深く関わる以上、対策は一部の業種だけの話ではありません。
国内では、岡山県吉備中央町でPFASの水質・血液検出を受け、町が企業に損害賠償を請求する事例が発生しました。また海外では、米国・欧州で3M社やデュポン社に対する訴訟・巨額の和解金支払いが相次いでおり、PFASは大きな訴訟リスクを伴う社会課題となっています。
4.PFAS関連最新トピック/現在とこれから


2025年に入り、PFASに関する最新の行政動向が続々と発表されています。汚染の原因となるような排水、廃棄物に対する規制が具体化、本格的な整備・強化の段階に入ったことがうかがえます。
再びライフサイクル全体を見たとき、「取り組みの起点」は飲料水の汚染源となりうる“上流側”にあります。廃棄物処分場や工場排水、土壌などが該当します。現在は飲料水の基準が定められていますが、今後は上流への規制が進んでいく見通しです。
5.PFAS対策のアプローチ手順/処理(除去)技術比較


PFAS対策を進める際は、まずどのPFASが対象か(既知・未知)、どの媒体を処理するか(地下水・排水など)を確認し、国内外の規制値をふまえて「対策仕様」を決定します。そのうえで、適切な測定を行い、除去(減量化)→破壊・無害化(現状では焼却が主)といった段階に進んでいきます。
代表的なPFAS処理技術を、処理性能・設置面積・廃棄物量・CO₂排出・コストなどの観点で比較しています。
・RO膜は処理能力は高いが、設備・コスト負担が大きい
・泡分離は簡易だが、短鎖PFASには対応が難しい
・LFP(当社技術)は処理対象・条件によっては、設置スペース・廃棄物量・CO₂排出を抑えられ、バランスに優れることが特徴です。
6.吸着剤の比較


PFAS除去に使われる主な吸着材を、性能・コスト・交換頻度などの観点で比較しています。
・活性炭:長鎖PFASには有効だが、短鎖PFASへの効果は限定的。コストは安価だが交換頻度は中程度。
・イオン交換樹脂:長短鎖PFASのどちらにも対応しやすく、交換頻度も少ない。やや高価だが高性能。
・バイオ炭:長鎖PFASには有効だが、短鎖PFASには不向き。材料コストは高いが、再生可能資源として注目されている。
→ 処理対象のPFASの種類・濃度・量に応じた最適な材料選定が必要です。
グラフは、活性炭とイオン交換樹脂のコスト効率の違いをイメージ化したものです。条件によってはコストが逆転します。
「どの材料が一番いいか」ではなく、処理する対象や状況に合わせて選ぶのがポイントです。
7.PFAS浄化技術「LFP」とは


当社のPFAS浄化技術「ECOクリーンLFP」は、独自の「プリーツフィルター」と「粉末吸着剤(機能性粉体)」を組み合わせ、高効率かつ低環境負荷でPFASを処理します。
<ECOクリーンLFPの特徴>
・機能性粉体をプリーツフィルターに薄く積層させ「添着層」を形成。その添着層でPFASを効率的に吸着・除去。
・細粒化した機能性材料により吸着能力を最大化。廃棄物等の大幅なコスト削減が可能。
・機能性粉体の添着、ろ過吸着、洗浄剥離、再添着まで全自動でスムーズな運用を実現。
8.導入検討の実務ポイント/従来技術との比較



<処理性能と適応性>
・粒状活性炭塔は低濃度のPFASには対応可能ですが、高濃度や短鎖PFASには処理が難しいケースが多く、対象の広がりに限界があります。
・一方、LFPシステムは低濃度・高濃度・長鎖・短鎖のいずれにも対応しやすく、PFAS7種など新たな規制物質への拡張性も高いことが特徴です。
<設備条件と運用性>
・活性炭塔は導入費用が少ない反面、大型で場所を取り、手作業での交換が必要です。
・LFPは初期費用がかかりますが、**設置面積がコンパクト(例:30t/hで40㎡)**で、交換作業が自動化されており、運用面での負荷が軽減されます。
→中長期的にはLFPがコスト・スペース・メンテナンス性の面で有利になる可能性があります。
<廃棄・CO₂観点の比較>
・従来の粒状活性炭塔処理は使用量が多く、交換や廃棄に伴う環境負荷が大きい。
・一方、LFP(粉末吸着剤×フィルター)方式は、使用量・廃棄量・CO₂排出ともに大幅に削減できることが、図からも明らかです。
9.LFP導入事例


<沖縄宜野湾市湧水公園>
2023年春、宜野湾市の湧水公園において、国内メーカーとして初めてPFAS浄化装置としてLFP(粉末吸着剤×フィルター)が採用されました。湧水に含まれていたPFOSおよびPFOAを、環境省の暫定目標値(50ng/L以下)まで低減。
30㎥/hの処理能力/ECOクリーンLFP 50M×4基
<泡消火設備地下ピット水浄化>
2024年秋、防衛関連施設にて泡消火剤由来のPFASが蓄積した地下ピット水のオンサイト浄化を実施。原水濃度460ng/Lを、LFPを用いた4回循環処理により“不検出”レベルまで低減。
装置はユニット化されており、レンタルにも対応。必要な場所・必要なタイミングで迅速に設置可能なフレキシブルな対応が強み。

セミナー資料を配布しています。
ぜひダウンロードしてご利用ください。
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2025NEW環境展ブースの様子
当日は多くの方にお越しいただき、年々高まるPFAS処理技術への関心をあらためて伺い知ることができました。装置のデモ展示や導入事例の紹介には、熱心なご質問も多数寄せられました。
登壇者:山内 仁

山内 仁
株式会社流機エンジニアリング
アジアアフリカ環境ソリューション室 室長
国立弘前大学教育学部卒業、同大学院理学研究科(地質)修了。理学修士。専攻:地質学、堆積学、教育学。技術士(応用理学部門(地質)、総合技術監理部門)。
大手コンサルに所属していた1994年ニカラグア国マナグア市上水道整備計画基本設計調査(JICA)、1998年汚染土壌等復旧工事総括監理業務(環境省)に従事。エンバイオ・グループに所属していた2012年から中国での土壌汚染対策に従事。近年は操業中工場向けに診断から様々な環境対策(排気・排水・土壌・廃棄物・水資源活用)を提供する中国環境リスクソリューションを構築する。2021年2月より、現職。